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現役ウクライナ兵、「きのこ雲」と少女の涙を壁画に 再び戦場へ

2026年7月17日 朝日新聞
(以下、要約)
核の恐怖 壁画に刻む 現役ウクライナ兵 描いたきのこ雲と涙
ウクライナの首都キーウにある空き店舗のシャッターに、「きのこ雲」の前に立つ両眼の少女が描かれた。ロシアとの戦争に従軍する現役兵士が完成させた壁画だ。
画家でウクライナ兵のマキシム・リバルコさん(45)。休暇を使い、同じく画家の妻アナスタシアさんと一緒に1週間かけて仕上げた。
少女のモデルは8歳で被爆した広島市の小倉桂子さん(88)。その体験を大阪市のフリージャーナリスト吉村大作さん(46)が聞き取って作った紙芝居「ケイちゃんの消えない雲」の絵本版が、壁画のモチーフだ。
この作品を世界に伝える活動を続ける吉村さんから6月に連絡を受けた。「休暇中に描く」と約束したリバルコさん。取材に対し、「核というテーマは、私たちウクライナ人の生活から一度も消えたことがありませんでした」と話す。
生まれ故郷のキーウは、旧ソ連時代の1986年に爆発事故を起こしたチェルノブイリ(チェルノブイリ原発から約100キロ)にあった。
ウクライナは91年にソ連から独立。一時は米ロに次ぐ世界第3位の核保有国となったが、94年にロシアと米英が結んだ覚書により核兵器を放棄した。
ところが2022年、ウクライナを侵略したロシアのプーチン大統領は「ロシアは世界で最も強力な核大国の一つ」と発言し、その後も核の脅しを繰り返している。
そのためリバルコさんは、核のボタンがいつ押されるかわからない恐怖と不安に襲われた。
核廃絶か核抑止か「考える礎を」
リバルコさんは、「核兵器を増やすことは解決策にならない。いずれ誰かが核のボタンを押す」。
広島のキノコ雲を描いたのは、核廃絶と核抑止のどちらが正しいかを考えるための礎として、「広島と長崎の記憶をウクライナから発信すべきだ」と思うからだ。
7月2日、少女の目から流れる涙を描き足して壁画は完成した。リバルコさんは集まった人たちを前に紙芝居を積み上げた。壁画の右下に描いたQRコードをスマートフォンで読み込むと、13言語に翻訳された紙芝居を無料でダウンロードできる。
事前のメールのやりとりで記者に「数日後に戦場に戻る」と教えてくれたリバルコさん。残された家族のいるキーウがいったん空爆されるかと案じていた。
3日に届いたメールには「戦友を失う度に心に消えることのない傷が残った。大きな悲しみをずっと負い続けている」とあった。
これを最後に連絡が途絶えた。
過去のメールを読み返していると、こんな言葉が目に止まった。
「戦争は私たちの人生を全て変えた。終戦が存在しない世界で、みんなが平和に過ごすことを願っている」。